【簡単・練習問題あり】血液ガスの読み方【AGとA-aDO2は必ず計算!】

血液ガス検査の読み方の講義をします!
研修医~看護師、普段血ガスを読まない医師向けの内容となっています。

※絶対に覚えなければいけない内容は赤線を引いています。
※本文中では上付き文字や下付き文字ができなかったのでご容赦ください。
※完全版のスライドをnoteで販売しています、講義用スライドをお求めの方は是非。
※pptxファイルですので自由に編集して使って頂けます。

目次

血液ガス検査とは?

迅速に少量の検体で上記項目を知ることができます。
機械によっては腎機能やトロポニン、Mgイオンが測定できるものもありますね。

沢山の検査項目がありますが「呼吸」「酸塩基平衡」にわけて考えるのがポイントです!

血ガスは「呼吸」と「酸塩基平衡」にわけて考えよう!

血液ガスの表記

早速「呼吸」と「酸塩基平衡」について考えていきたいところですが、血液ガスの表記をまず学習しましょう。
「PaO2」、「SaO2」、ときには「PcvO2」といった言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
これらはちゃんと法則性があるのです!
図解してみました!

最初の大文字が「それが何を示しているか」です。単位を規定しますね。
分圧か飽和度のことがほとんどなので2つを覚えておけばいいでしょう。

次の文字は「その検査結果はどこの値を反映しているか」です。
ここは多岐にわたります、画像にはのせていませんが、「cv」であれば中心静脈ですね。

最後の部分は「何の気体に関する結果か」です。
O2やCO2のことがほとんどですね。

ではよく聞く「SpO2」だとどうなるでしょうか、画像を見ながら考えてください。







そうです「経皮的酸素飽和度」になりますね!

呼吸編~低酸素血症~

では、症例をみながら血液ガスの読み方を練習していきましょう。

まず病歴とバイタルの確認です。
狩りをするために毒を塗っていたのでしょう。
本気の狩猟用の矢だったんですね。

SpO2が下がっていて頻呼吸だなー…

とみなさん思うでしょう。ここで低酸素血症の病態4つもおさらいしておきましょう。

低酸素血症は「肺胞低換気」「シャント」「換気血流不均衡」「拡散障害」の4パターン
肺胞低換気は主に筋肉や神経の問題で起こります。
低換気ですので高CO2血症も併発しがちです。

その他は大まかに言って肺の障害です。
この辺はまた低酸素血症の講義でします。

・低酸素血症の病態は「肺胞低換気」「シャント」「換気血流不均衡」「拡散障害」の4パターン
・「肺胞低換気」は主に筋肉や神経の問題、他は肺の問題

さて、今度は血液ガス分析をみてみます。
pHは7.10です。
人体は酸塩基平衡が約7.40になるよう維持しています。
7.40より値が小さくなると酸に傾いておりアシデミア、大きくなるとアルカリに傾いているアルカレミアとなります。
今回はアシデミアですね。

PaO2は酸素化の指標です。約60mmHgがSpO2でいう90%程度に相当します。
バイタル通り悪いですね。

PaCO2は換気の指標です。
正常値は約40mmHgです。
70mmHgと高くなっているのは換気ができておらず血中にCO2が溜まっているということが予測されます。

ここまでをまとめると

と、なります。
がここで一つ目のポイントです!

低酸素血症を見たら必ず「A-aDO2」を計算する!!

A-aDO2とは?

初見の言葉がでてきましたね。
「A-aDO2」も前述の表記の仕方に照らし合わせて解読していきましょう。

「肺胞気動脈血酸素分圧較差」となります。
これは、「肺胞内の気体」と「動脈血」の「酸素分圧」の「差」ということですね。

で、これは肺の拡散能の関係もあり、正常な人でも10mmHg程度の差があります。
これが大きくなるということは肺になんらかの異常があることを示唆します!

では、実際にこの値を求めていきましょう!

ここからは複雑になるので、この背景色の部分は読み飛ばしてもOKです。

A-aDO2=PAO2-PaO2  ※ここからの単位は全てmmHg
まず、A-aDO2は「肺胞気と動脈血の酸素分圧較差」なのでこういった式になります。

で、肺胞内の酸素分圧は「吸気自体の酸素」から「体で使われた酸素」を引かなければいけません
PAO2=吸気の酸素分圧(PIO2)-体で使われたO2

さらに、我々は吸気を気道で加湿しているので加湿した水蒸気圧も加味すると
PIO2={760(大気圧)-47(水蒸気圧)}×0.21(酸素分圧)≒150  となります

体で使われたO2=PACO2÷呼吸商 であらわされます。
呼吸商というのは、「ガス交換のO2とCO2の比」です。
だいたい人はO2を10交換する間にCO2は8交換しているので呼吸商は0.8です。

CO2は酸素に比べて拡散能がとてもいいです。
一瞬で肺胞内血液中の分圧は平衡になります。つまりPACO2=PaCO2。

すると体で使われたO2=PaCO2÷0.8 で表されます。

一旦最初に戻ります。PAO2=吸気の酸素分圧(PIO2)-体で使われたO2 ですので、
それぞれを代入すると、
PAO2=150-PaCO2/0.8 となります。

A-aDO2=PAO2-PaO2 だったので
A-aDO2=150-PaCO2/0.8-PaO2 これで完成です。

とにかくA-aDO2=150-PaCO2/0.8-PaO2を覚えてください!

ただ、A-aDO2にも注意点があります。
それは、

  • 加齢によって基準値が変わる→基準値<年齢×0.3
  • 酸素分圧はFIO2=0.21で計算している→酸素投与中の患者では使えない

という点です。では、先ほどの狩猟用の弓の症例に戻ってみましょう。

A-aDO2=150-(PaCO2/0.8)-PaO2
これが大きくなると肺が悪い

呼吸編~低酸素血症~の続き

では、実際に先ほどの患者さんのA-aDO2を計算してみましょう、どうなりましたか?

A-aDO2=150-(PaCO2/0.8)-PaO2なので…
そうです22.5です!

まだA-aDO2が増加しているというには早いです。基準値を年齢から計算しましょう。
年齢×0.3なので18ですね、やっぱりA-aDO2は大きくなっています。

一見、筋弛緩薬による低換気かと思いましたが、肺自体もどうやら悪いようです。

高齢やし、筋弛緩の影響もあって誤嚥とかしてるかも…

とここまで考えを巡らせることができます。
A-aDO2って有用ですよね!

呼吸編~練習問題~

ではもうひとつ練習問題を解いていきます。

病歴とバイタルを確認します。

不安神経症の若年女性で薬のコンプライアンスも悪い…
酸素化はちょっと悪いけどそれほど。
呼吸数も多いし若干PaCO2が低いし…
過換気症候群でいいかな?

という感じですね。
とはいえA-aDO2を計算してみましょう。
すると…?

A-aDO2は大きくなっていますね。
経口避妊薬の内服歴もあることから肺塞栓症の可能性もでてきます。

ということで、呼吸編でした。
とにかくA-aDO2は必ず計算してください!

おつかれさまでした!
一休みしたら酸塩基平衡編にいきましょう!!

酸塩基平衡の基本

まずは酸塩基平衡の基本です。

基本はこのスライドに詰まっています。
ひとまずこの内容は全て覚えてください。

で、この「代償」という言葉ですが、これは
「片方が乱れたら、もう片方がバランスをとる為に変化する」ということです。

この「代償」がうまくいっているかを判断することが非常に大切です。
「呼吸性アシデミアを代償するためにはHCO3-がどれくらい動く」というのが決まっています。
残念ですが、これも覚えるしかありません

覚えにくですが頑張りましょう。
呼吸性アシドーシス・アルカローシス→代謝性アシドーシス・アルカローシスと並べて、
語呂合わせで「イサ子は西へ去にな(イ1 サ子3.5 はに2 し4 へ去に1.2 な0.7)」と覚えます。

西から上京してきたイサ子が、東京で挫折し周囲の人に言われるわけですね…

酸塩基平衡編~症例①~

ではさっそく基本を理解した上で症例を見ていきましょう

さきほどのおじいちゃんです。
下記手順で考えていきましょう。

  • アシドーシスかアルカローシスか
  • 呼吸性か代謝性か
  • 呼吸性であれば急性か慢性か
  • 代償は正常か

考えれましたか?
考えれたら次の画像で答え合わせです。

画像では代償のところを省略しすぎているので補足します。

PaCO2は正常値40mmHgにも関わらず70mmHgに増加しています。
30mmHgも変化しているんですね。
で呼吸性アシドーシスが10mmHgぶん進むとHCO3-は1mEq/L増えるはずなので、
HCO3-の正常値24mEq/Lに代償分の3mEq/Lを足して、27mEq/Lぐらいになるはず!

と考えます。

代謝性アシドーシスやアルカローシスを見つけたら

代謝性の酸塩基平衡をみつけたら原因を考えましょう
これも暗記です。

代謝性アルカローシスはこれを覚えてください。
代謝性アシドーシスをみつけたらAG(アニオンギャップ)を検索しなければいけません。

体内では陽イオンと陰イオンが等しく存在します。
その内訳は図のようになっていて、陽イオンはほとんどがナトリウム(Na+)です。
また、陰イオンは塩素イオン(Cl-)と重炭酸イオン(HCO3-)に加え、その他の陰イオンで構成されています。

この、「その他の陰イオン」をアニオンギャップといいます。
これが増えるのは、体内で変な陰イオンが増えていることを示唆します。

AG=Na+-{(CL+HCO3)}

これも必ず覚えてください。
正常値は約12です。
これをもとに鑑別がすすめられます。

という風に鑑別していくわけです。
また、「代謝性アシドーシスがAGを計算する」と言いましたが、代謝性アシドーシスが隠れていることもあります。
したがってAGは全例で計算しましょう。
AGが増加していれば隠れ代謝性アシドーシスが必ずあります。

・全例AGは計算する
・代謝性アシドーシスは下痢、RTA、生食大量投与、アセタゾラミド、中毒、腎不全、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス
・代謝性アルカローシスは嘔吐、利尿薬、高CO2血症の急な補正、原発性アルドステロン症、Barter症候群

で、実はAG増加を見つけたらもう一つして欲しいことがあります。
それが補整HCO3-の計算です。

また新しい言葉がでてきたし、計算だし、で嫌になると思いますがこれで最後です。

AG増加をみつけたら補整HCO3-を計算する

疲れてきたと思いますがもう一踏ん張りです!
補整HCO3-で何がわかるかというと、
AG増加性代謝性アシドーシスに隠れた代謝性アルカレミアはないか?です。
では症例を提示します。

概要は画像を見て頂くとして、AGが開大していた症例ですね。
この「AGが増えてなかったらHCO3-はいくらだったのかな?」を計算します。
この症例ではAGは25となります。
AGの正常値は12なのでその差(ΔAG)は13です。

この人はケトン体の増加分が13ということになるのですが、それがなければHCO3-は
実測のHCO3-の22と、ΔAGの13を合わせて25mEq/Lあったはず
なのです。

これって代謝性アルカレミアですよね?
代謝性アルカレミアがあるのにAGが増えたせいで隠れてしまっていたんです。
この症例であれば嘔吐による代謝性アルカレミアも存在している。となります。

なんとなくわかったでしょうか?

AG増加をみつけたら補整HCO3-を計算して、隠れ代謝性アルカレミアを探す

酸塩基平衡編~最後の症例~

ではいよいよ最後です!
はりきっていきましょう!

  • アシデミア?アルカレミア?
  • 呼吸性?代謝性?
  • 呼吸性であれば急性?慢性?
  • 代償は正常?
  • AGは大丈夫?AG増加してたら補整HCO3-も計算しよう。
  • 最終的にどんな酸塩基平衡異常があって、それぞれの原因は何と考えられる?
  • ついでにA-aDO2も計算してみよう。

総まとめですね!
次の画像で答え合わせをしましょう!

いかがでしたか?
無事答えはあっていましたか?

まとめ:A-aDO2とAGは必ず計算!

以上です、長丁場おつかれさまでした!
質問やご指摘があればお問い合わせください。

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この記事を書いた人

一児の父┃救急専門医┃集中治療専門医
自分の学習内容のアウトプット、講義資料の共有をしたい!
という理由でブログを開設しました。

Twitterやインスタでミニレクチャーをしています🔥
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