尿閉はER/救急でしばしば出会いますよね!

導尿して原因検索しておけばいいよね!余裕!
なんて言っていると足元をすくわれます!
沢山の尿が溜まっていた場合、尿閉解除後利尿(Post obstructive diuresis)をきたす可能性があります。
電解質異常や脱水でショック、死亡も報告されています。
安直に帰宅させず、しっかりとモニタリングをしましょう!
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※pptxで提供するのでお好みに編集して利用してください。
尿閉の患者がきたら
まずは導尿して尿閉の解除を行いますよね!
そして尿閉の原因検索です。鑑別は下記。
- 生殖器:外尿道口狭窄、包茎、萎縮性膣炎
- 尿道:石、狭窄、憩室、後部尿道弁、腫瘍、手術後
- 前立腺:BPH、石灰化、腫瘍、膿瘍
- 膀胱:石灰化、血餅、腫瘍、膀胱頚部機能不全
- 婦人科:子宮脱、膀胱脱、妊娠、卵巣腫瘍、子宮腫瘍、子宮頚部腫瘍
- 腸管:宿便
- 神経:多発性硬化症、糖尿病、脊髄損傷、パーキンソン病、脳血管疾患
ここまでするのは当然です!
が、あまりにも多量の排尿があった場合にはPost obstructive diuresisに注意です!
Post obstructive diuresis(尿閉解除後利尿)とは
尿閉解除後に生理的利尿が生じることはしばしばあります。
しかし、通常は24時間以内に改善します。
一方、尿閉解除後に利尿が病的に継続することがあります。
それをpost obstructive diuresisと称します。
【頻度】尿閉患者の0.5-5.2%に生じる
【定義】尿量>200ml/hが2h以上持続 or 24時間尿量>3L
【重症化のリスク】Cre高値、心不全徴候、中枢神経症状、慢性経過、尿貯留が多い
導尿時に1500ml以上の排尿があれば発症の可能性が高いので経過観察入院がベターです。
1000ml以上であれば継続したモニタリングを検討しましょう!
Post obstructive diuresisの病態生理

病態は端的に言えば浸透圧利尿に加え、ADHの感受性が低下することで生じます。
Post obstructive diuresisの合併症
ただの多尿、と甘く見るといけません。
報告されている合併症としては
体液量減少、低/高Na、低K/Mg、代謝性アシドーシス、ショック、死亡
ということで下記のモニタリングと対応を行いましょう!
Post obstructive diuresisの対応
入院して経過観察することになるのですが、観察項目/頻度の指示は
- 尿量:2時間毎
- バイタル:6-8時間毎
- 体重:毎日
- 電解質:12-24時間毎
- 尿検査:尿電解質、尿浸透圧、尿比重を適宜
また、経口摂取はOKで飲水制限も不要です。
現実的には2時間ごとの尿測は一般病棟では困難ですよね。
最初は頻回に確認し、途中から6時間毎にする等、各施設にあわせた工夫が必要ですね!
Post obstructive diuresisの治療

少し調べたところ所説あるようです。
今まで私は画像上の輸液で追いかける対応をしていました。

輸液しているから尿がでるのでは?
と複雑な気持ちになりながら特に困ることなく対応できています。
モニタリングや急な対応も可能であれば、下のwatchful waitingでもいいのかもしれません。
ちなみに
尿閉を緩徐に解除したり、カテーテルを断続的にクランプするのは意味がないようです。
膀胱収縮による血尿、迷走神経反射、閉塞後利尿、低血圧の予防にはならないとの報告があります。
一回でさっと排尿させましょう。
それでも多尿が続いたら
その際には多尿の鑑別に立ち返り、他の疾患も鑑別しないといけませんね。
代表的な鑑別疾患も記載しておきますね。
- クッシング症候群、原発性アルドステロン症
- 尿崩症
- 薬剤性:カフェイン、リチウム等
- 早期腎不全
- 過剰な静脈内輸液
- 多飲
- 高カルシウム血症
- 高血糖症
- 低カリウム血症
- 尿の濃縮能異常
- マンニトール等浸透圧利尿
まとめ:1000mL以上溜まっている尿閉は注意!
放置すると、ときには死に至るので油断は大敵です!
知ってるだけで防げるので同僚にも情報提供してあげてください!
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