今回は応用編として、「人工呼吸器の非同調」を紹介します。
少しマニアックです(笑)
非同調は気付くのが初めの一歩です!
「本気の」人工呼吸器設定に挑戦しましょう!
非同調に関して、グラフィックモニタを提示しながら対応の仕方も解説します。
やや単調ですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
【簡単に理解する】人工呼吸器管理の基本【モード決定やパラメータ設定】もよろしくお願いします。
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非同調の分類

人工呼吸の吸気相は「トリガー相」「送気相」「サイクルオフ相」にわけられます。
非同調もそのタイミング毎に分類するのがわかりやすいです。
では、ひとつずつ確認しましょう。
トリガー相での非同調
オートトリガー

オートトリガーは自発呼吸がないにも関わらず、分泌物や結露の移動・リーク・心拍動(小児に多い)をトリガーしてしまって送気が行われる非同調です。
患者自身は息を吸う気がないのに送気されてしまい非常に不快です。
また、必然的に頻呼吸になるので呼吸性アシドーシスを招く可能性があります。
頻呼吸になり呼気時間を確保できなくなれば、息が吐ききれず内因性PEEPを招きます。
内因性PEEPはイメージしにくいかもしれませんが、息を吐ききらない呼吸を繰り返してみればわかると思います。
残気量がどんどん多くなって苦しくなりますよね、それのことです!
また、自発呼吸の消失に気づけなければ脳死判定の遅れに繋がります。
このオートトリガーの原因は様々ですが、モニタ波形で原因の推測ができます!

原因:上図のように基線が細かく震えているのは気道分泌物や結露の存在を示唆します。
液体が回路内の空気を動かし、人工呼吸器はそれをトリガーと勘違いしていまいます。
対応:吸痰や回路内の結露を除去しましょう。

原因:上図のように換気量が突然0になる波形はリークの存在を示唆します。
対応:回路を確認しましょう。

原因:特に小児に多いですが心臓の拍動を感知して送気を開始してしまうこともあります。
対応:感度を鈍くし、本当の吸気でのみトリガーされるようにします。
ダブルトリガー

二回連続で送気されて換気量が過大になってしまうのがダブルトリガーです。
これは患者の求める吸気時間より設定が短すぎ、一回の吸気で二回送気されるため起こります。
原因:吸気時間の設定が短い、もしくは患者の吸気努力が強すぎることで起こります。
対応:設定を長くしたり、鎮痛や鎮静の見直しを検討します。
ミストリガー

ミストリガーは患者は呼吸をしたがっているのに、人工呼吸器がサポートしてくれない非同調のことです。
患者からすれば欲しい補助が貰えないので呼吸仕事量が増大し、呼吸筋疲労を招きます。
原因:過鎮静により吸気努力が著しく減弱していたり、人工呼吸器のトリガー感度が鈍すぎると生じます。
対応:鎮静の深度を見直したり患者の吸気をしっかりと拾える感度に設定します。
リバーストリガー

リバーストリガーは強制換気の直後に自発呼吸を行う非同調です。
イメージとしては「自発呼吸を忘れてぼーっとしていたら、機械が無理やり送気してきて、『あ、やべっ忘れてた!』って慌てて呼吸をする」感じです。
これは過大な一回換気量を招きます。
原因:過鎮静や呼吸数の設定が多すぎることが多いです。
対応:しっかり覚醒を促してあげましょう。
二段呼吸
「二段呼吸」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
勘のいい方なら気付いているかもしれませんが「二段呼吸」には二種類あります。

ダブルトリガーのときと、リバーストリガーのときです。
「一段目の呼吸が強制換気かどうか」で見分けられます。
一段目の呼吸が補助換気であればダブルトリガー。
一段目の呼吸が強制換気であればリバーストリガーですね。
しっかり鑑別して対応しましょう!
送気相での非同調
送気流量の不一致
主にVCVのときに起こりますが、送気流量が足りないことでも非同調は生じます。

患者が吸いたい流速に満たない送気流量だった場合、相対的に吸気努力が強くなり、気道内圧が下に凸の形になります。
また、あまりにも流量が不足していると、過剰な吸気努力が気道内圧を陰圧にし二回目の送気をトリガーしてしまうこともあります(ダブルトリガーになる)。

対応:これは流量を上げることで改善できます。

サイクルオフ相での非同調
送気の早期終了

送気が患者自身の吸気時間より早く終わってしまうと、患者は「最後までちゃんとサポートしてよ!」となります。
このサポートしてくれていない時間は患者の吸気努力が増えてしまっています。
また、送気が早く終わったにも関わらず患者が吸気を続けていたら、再度トリガーされダブルトリガーを起こすこともあります。
対応:吸気時間を「患者自身の吸気時間」に近い設定にしましょう。
送気の終了遅延

送気の終了が遅くなると、患者は「もう吐きたいのに、機械がずっと押し込んでくる…」となってしまいます。
吐くことにも力を要する状態になってしまいます(呼気努力の増大)。
また、吸気時間が長いということは呼気時間が短いということです。
呼気を十分に吐ききれないと息が吸えなくなりミストリガーの原因になります。
対応:これも、吸気時間を「患者自身の吸気時間」に近い設定にしましょう。
まとめ:非同調に気づき、対応して予後改善を目指そう!
単調な記事でしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました。
これであなたも人工呼吸器マニアの道に足を踏み入れましたね!
基本的な設定の習得がまだの方は、【簡単に理解する】人工呼吸器管理の基本【モード決定やパラメータ設定】も読んでみてください!
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参考・引用文献:
日本集中治療医学会専門医テキスト第3版
日集中医誌 2017;24:605-12 等
コメント
コメント一覧 (2件)
>二段目の呼吸が強制換気であればダブルトリガー。
二段目の呼吸が補助換気であればリバーストリガーですね。
一段目が強制換気であればリバーストリガーの間違いだと思います。
ご指摘ありがとうございます。
完全に誤植です…修正いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。